社会学者に聞く、ニューノーマル時代の新しい夫婦円満の秘訣「3つのゆとり」とは

2021/04/23

コロナ禍において、さまざまな価値観が変わっていくなかで、多くの方が家族以外の人との接触を控えるようになり、家庭で過ごす時間が増えてきました。こうした「ニューノーマル=新しい生活様式」が登場したことよって、夫婦の在り方も変わりつつあります。家族社会学などを専門とする社会学者の筒井淳也先生に、ニューノーマル時代に円満夫婦でいるための秘訣について教えてもらいました。

ニューノーマル時代の夫婦に、今何が起こっている?

家族の在宅時間が増えることで夫婦関係にどのような影響を与えるかというと、いいことも悪いこともあります。在宅時間が長くなることで、家の中でしなければいけないことや、したいことをやりやすくなるというメリットがある一方、家事分担がうまく調整できていない夫婦も多いようです。

夫婦ともに、お互いの在宅時間が増えると満足度が高くなるという側面もあるのですが、思うように家事分担をしてくれなかったり、子どもを含めて家族の在宅時間が増えることで家事の量がいつもより増えたり……。コロナ禍以前とはまた違ったストレスを抱えている方が増えているのが現実です。

「ワークライフバランス」という考え方から、今までは外で働く時間を短くして、できるだけ家の中で自由に使える時間を増やそうとしていました。しかし、コロナ禍においては家の中にいる時間そのものは長くなりましたが、その分、家事が増えたり育児に追われたりして思ったよりも自由に使える時間が増えていないという新しい悩みが生まれています。

この悩みを解消するためには、家の中でも職場で働いているときのように、要領よくタスクをテキパキとこなしていかないと、本当の意味での自由な時間は増えていきません。そのうえで、円満夫婦に過ごすためには、「3つのゆとり」が重要です。この「3つのゆとり」とはどのようなことなのか、ひとつずつ解説していきましょう。

【その①時間的ゆとり】家事にも仕事と同じように効率化のためのアイデアを導入する

ひとつ目は、「時間的ゆとり」です。1日の家事の時間を時短したり、分担したりして「時間的ゆとり」を生むためにできるアイデアには、たとえばこんなことがあります。

時間的ゆとりを生むアイデア
・下味冷凍など時短調理テクニックを取り入れる
・市販の調味料やインスタント、レトルト食品をフル活用する
・時短できるキッチンアイテムや掃除グッズを利用する

仕事をするとき、私たちは文具やコミュニケーションツールなどさまざまなものやサービス使って、小さな努力を積み重ねながら、効率的に作業をする方法を取り入れています。その結果生まれた時間をどう有効活用するかを、みなさんビジネスシーンでは考えているのではないでしょうか。

職場でしているのと同じように、家庭にもさまざまな便利なグッズやサービスをどんどん取り入れていきましょう。上記アイデア以外にも、私が参画している生活者の暮らしにゆとりを生むことを支援する「ゆとりうむプロジェクト」のサイトでもいろいろと紹介していますが、時短家電やアイディアはネットで検索すれば、たくさんの情報を得ることができます。

時短できるキッチンアイテム、掃除グッズの例
・フライパン用ホイル
油がこびりつきにくく、料理後のお手入れがラク。魚も上手に焼けます。
・髪の毛キャッチシール
汚れたら取り替えるだけでOK。面倒な排水溝のお手入れの手間が省けます。
・プッシュ式やジェルボールタイプの洗濯用洗剤
計量する手間がなく手も汚れないため時短に。

⇨100均グッズで家事を時短!料理・掃除・収納をラクにする便利グッズはこちら

大切なのは、こうした便利グッズを実際に使ってみること。そうしなければ、良さを実感して生活に取り入れようと行動を変えることはなかなかできません。経験を重ねた40代前後になってくると、だんだん新しいことを始めるのが苦手になってしまう傾向があるようです。

まずは面倒くさくても、情報をきちんと仕入れること。そして試してみること。いくつかやってみるうちに、「時間的ゆとり」が生まれるのを実感できるはずです。小さな工夫を軽んじることなく、できることからどんどん取り入れていきましょう。

たとえば、インスタントやレトルト食品は、調理時間を省けるのはもちろんですが、賞味期限が長く、まとめ買いができるので、買い物の回数を減らし、在庫管理をラクにしてくれるというメリットもあります。保存食品を収納するスペースや食べる頻度などに合わせて、ちょっとした工夫をするだけでも、「時間的ゆとり」は生まれます。

⇨「時間的ゆとり」を生むのに効果的な「下味冷凍」の記事はこちら

【その②空間的ゆとり】「パーソナル空間」と「パーソナル時間」が幸福度を上げる

ふたつ目は、「空間的ゆとり」です。「空間的ゆとり」があれば、たとえば必要なものを買いだめしておいて買い物の回数を減らし、時間的ゆとりを生むことができるだけでなく、パーソナルスペースの確保も可能になります。

空間的ゆとりを生むアイデア
・夫婦共通またはそれぞれの趣味の時間・空間を確保する
・オン/オフを切り替える在宅ワークスペースの工夫
・団らんスペースで会話を楽しみながらくつろぐ

日本の住宅環境では、十分に広いスペースを確保するのはなかなかむずかしいものですが、パーソナルスペースは「ワークライフバランス」の“ライフ”の基本。家族に気兼ねすることなく使える「パーソナル空間」と「パーソナル時間」が、個人の幸福度を向上させるためにはどちらもとても大切です。

空間的ゆとりを生む一律の工夫の方法があればいいのですが、それぞれの家のつくりや家族構成、働き方によって、有効な方法は変わってきます。家族一人ひとりのパーソナルスペースの確保が理想ではありますが、住環境によってはむずかしい場合は「共有のパーソナルスペース」をつくり、時間によって一人ひとりで楽しむ空間を持てるとよいでしょう。

時間的ゆとりがあれば、家庭にあった空間的ゆとりを生む工夫のための時間も確保できますから、夫婦でどちらのゆとりも大切にできるといいですね。

【その③心理的ゆとり】相手と自分が違うと認めることが円満夫婦への出発点

3つのゆとりの中で「心理的ゆとり」が、今の日本の夫婦にはもっとも足りていないのではないかと考えています。

心理的ゆとりを生むアイデア
・相手に求め過ぎず、夫婦でやれる人がやる
・家事品質を保てなくてもOKとする
・家電やプロを活用し、つくった時間を楽しむ

円満夫婦のためには、「相手に求め過ぎないこと」が基本。最近はサービスを受ける側が過剰に主張する「モンスターカスタマー」が社会問題となっていますが、これは家庭でも起こりうることです。

たとえ夫婦であっても「求める基準」にはかならずズレが生じます。もしそのズレが気になるのなら、まず「自分でそれを埋められるかどうか」を考えるべきであって、最初から相手の基準がおかしいと決めつけるべきではありません。「基準のズレ」は精神的ストレスにもつながりますから、相手に求め過ぎない、完璧な基準を決め過ぎないことが大切で、「相手と自分は違う」と認めることが円満夫婦への出発点です。

日本人のコミュニケーションは、まず「相手と自分は同じ」という価値観から始まります。たとえば、海外の人に比べて日本人はあまり「好きだ」「愛している」という愛情表現をあまり言いません。それは自分と相手の考えが一致していて「言うまでもない」と思っているからです。

でも今はそんな時代ではありません。価値観やライフスタイルが多様化する現代においては、「家事とはこのくらいの水準でおこなうもの」という考えも人それぞれ違います。相手と自分が違うということを認めることが「心理的ゆとり」の基本です。

それぞれに「自由な時間」があるからこそ夫婦は円満でいられる!

便利なサービスやおいしいレトルト食品などが増えている一方で、それらを取り入れることに罪悪感がある人もいるでしょう。そんな人はまず、考え方の順序を整理してみてください。

インスタントや冷凍食品などを使って時間的ゆとりが生まれてから、手の込んだ料理をつくることはできます。でも時間的ゆとりが足りていないのに手料理にこだわってしまうと、ほかのゆとりもどんどん失われて苦しくなってしまいます。世界から見ると、日本は家事に求める基準が高すぎる傾向にあるので、今より家事のハードルを下げても、多くの場合は何の問題もないでしょう。

また、これまでは「外で忙しく働き、家の中ではゆっくり休みたい……」と考える男性が多かったのではないかと思います。でもその考え方はもう今の時代にはそぐわないのではないでしょうか。

ニューノーマル時代においては「仕事も家事も過度にがんばり過ぎず、やるときはテキパキやって、生まれたゆとり時間で暮らしを楽しむ」ことが、夫婦どちらにとっても大切です。それぞれに「自由な時間」があるからこそ、夫婦は円満でいられます。夫婦共働きでいつも時間に追われるような生活をしていたら、「自分たちは夫婦円満なのか」どうかさえ、わからなくなってしまうかもしれません。

普段あまり家事をしていないという男性には、家の中にも職場と同じように結構面倒な仕事があるということをぜひ認識してもらいたいです。「家の中の仕事はシンプルで誰にでもできる」と思っている人がいたらそれは大まちがい。家でも職場と同じようなスキルを発揮できる仕事がありますし、それができてこそ「本当に仕事のできる人間」ではないでしょうか。

逆に言えば自分は家事が苦手だと思っている男性も、職場で仕事ができているのなら、家でも同じようにできるはずです。ぜひ夫婦で家の中の仕事を上手に分担しあって、ゆとりのある円満夫婦をめざしてほしいと思います。

筒井淳也先生
立命館大学産業社会学部教授・社会学者。専門は家族社会学・計量社会学。「時産」によって生活者の暮らしにゆとりを生むことを支援する「ゆとりうむプロジェクト」理事長。内閣府第4次少子化対策大綱策定のための検討会委員、日本家族社会学会理事も務めている。
ゆとりうむプロジェクトHP https://yutorium.jp/

ゆとりを生む“工夫のタネ”はいろいろなところに!

今回は、社会学者の筒井淳也先生の解説で、円満夫婦になるための「3つのゆとり」についてご紹介しました。日々の暮らしのあらゆる場面で、ゆとりを生むための“工夫のタネ”はたくさんあるので、増えたおうち時間を有効に使って夫婦で話し合えるといいですね。

実際に家事や育児に追われずに、夫婦でゆとりある暮らしを送っている方は、どのような工夫をしているのでしょうか?夫婦の在り方を取材したこちらの関連記事もぜひ参考にしてみてください。

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