いま家を建てるなら”エコハウス”!どんな家なのか専門家に聞いてみた!

2020/08/28

いつかは持ちたい夢のマイホーム。結婚・出産を機にマイホームを検討し始めたのはいいけれど、いざ考えてみると、どんな家がいいのだろう…と悩みますよね。

そんななか、最近では、家づくりのキーワードのひとつとして「エコハウス」が注目を集めています。いつかはマイホームを建てたいと考えているご家族のなかには、聞いたことがある、気になるという方も多いのではないでしょうか?

実は環境だけでなく、家計にも暮らしにもやさしいのがエコハウス。ここでは、エコハウスに関するさまざまな疑問にお答えすべく、エコ住宅の設計実例コンテスト「日本エコハウス大賞」で審査員を務められた、建築家の伊礼智さんにお話を伺いしました。

家族の暮らしを豊かにする家のお話。これからの住まいについて考えてみませんか?

エコハウスとは、どんな家ですか?


写真:建築家 伊礼 智さん

――本日はエコハウスについて、いろいろお話をお伺いしたいのですが、そもそもエコハウスに定義はあるのでしょうか?

広く一般的にエコハウスの基準は、「少ないエネルギーで健康的に暮らせる家」だとされていますが、最近は環境に影響を与えない素材を使用するなど、エコハウスの定義は広がってきています。

建築の世界では、エコハウスという言葉が出てくる前から「パッシブデザイン」という概念がありました。パッシブ(passive)とは“消極的な”という意味で、家づくりにおいて、できる限り機械を利用せずに、光や風など自然を上手に取り入れて健康に暮らすことをコンセプトとしています。

このパッシブデザインは、私の先生である奥村昭雄さんが、土地の気候に合わせて豊かに暮らす家づくりという発想から考案したものです。エコハウスというと、断熱性能や気密性ばかりが重要視される傾向にありますが、私はその地域の気候や自然と応答して暮らすこと、このパッシブデザインの要素も取り入れた家を、エコハウスと定義しています。

たとえば、日本は「夏を旨とすべし」と言われ、開放的な住まいが多いのですが、断熱は不十分で冬は寒い家が多い。そのため断熱をしっかりと施し、窓などの開口部の性能をしっかりと上げれば、冬でも少ないエネルギーできちんと暖まるような家になります。これが、私の考える理想的なエコハウスです。

エコハウスが増えれば、未来が変わる!

――エコハウスが増えると、何が変わるのでしょうか?

人の暮らしが豊かになっていくと思います。

エコにはいろいろな意味が含まれますが、そのなかでも日々の暮らしはもちろん、子どもや孫の世代にも、少しでも良いものを残していくことがエコハウスの大きな目的になります。同時に、地球の裏側の人たちのことも考えて家づくりをやらなければいけない。これからの家づくりは、できるだけ地球温暖化の原因のひとつでもあるCO2を排出させないことが重要です。

そして隣近所への配慮も大切な要素です。 たとえば、再生可能エネルギー設備を導入することはエコハウスのひとつの条件ですが、必要以上に太陽光パネルを家に乗せて、隣の家に影をつくるような思いやりのない設計は、エコハウスとは言えないと思います。

――その土地、周囲、ひいては地球の環境にも配慮していくことが大切だということですね。

はい。「足るを知る」という言葉があります。「身分相応の満足を知る」という意味ですが、これがパッシブデザインの基本的な考え方になります。欲張りすぎず、奥ゆかしさや思いやりを含めた家づくりが、日本らしいエコハウスだと私は考えています。

そして建築家はもちろん、これから家を建てる人、家を建て替える多くの人たちがもっとエコハウスに興味を持つようになると社会全体が豊かになり、きっと未来も変わっていくと思っています。

エコハウスで省エネ、どうやって実現しているの?

――エコハウスの大きな特徴のひとつに「省エネ」があると思います。具体的にどのような工夫で省エネを実現しているのでしょうか?

まずは断熱材をしっかり入れることですね。東京あたりだと、寒冷地のように外張り断熱までは必要ありません。壁の中に断熱材を入れることで充分、効果が出ます。

新築でもリフォームでも、この断熱の施工をとくに私は大切にしています。もっとも熱が逃げるのは、窓と屋根。もちろん、地域や家の大きさにもよりますが、一般的に屋根面は壁の2倍程度の断熱材を入れるとちょうどよいと思います。

またリフォームで予算がないときは、窓周りに手をつけるようにします。素材はアルミサッシではなく、複合サッシか樹脂サッシがおすすめ。また、最近はペアガラスが主流で、寒冷地ではトリプルガラスも普及しているので、場所によって選ぶとよいでしょう。開口部は、お金をかけるほど結果が出るので、損はしないと思います。

断熱材は夏にも効果がある!

――断熱材を入れることで冬は家が暖かくなる、というイメージはつきますが、夏にも断熱材の効果はあるのでしょうか?

断熱材を入れると、冬は暖かいけれど夏は暑くなると思っている方がいますが、それはまちがいです。設計によって冷房の効きが良くなり、部屋中に涼しい空気を保てるようになります。断熱性は冷たい空気を外に逃さないという点でも効果を発揮するのです。

また、断熱性以外のもうひとつのポイントが、気密性です。壁の中の隙間をしっかりと施工しないと空気が抜けてしまい、冷暖房効果が薄れてしまいます。具体的にはスイッチプレートの周りや、柱の周りに気密テープを貼ったり、水蒸気が壁の中に入ることを防ぐためにバリアシートというものを利用したりします。こうした高気密・高断熱を実現することが、省エネにもつながります。

人が暮らす家だからこそ“情緒”も大切

――そのほかに、エコハウスによる省エネには、どのようなポイントがありますか?

エコハウスの理想は、方角に関わらず家の中で温度のムラがなく、室内のどこにいてもできるだけ単一な室温を保てる家です。たっぷり太陽が入るように、南側の窓を大きくすると、冬は“得る熱”より“奪われる熱”が大きいと言われていましたが、これはまちがいで、“得る熱”が多いことがわかってきました。反対に東と西、北側は日差しを遮る(日射遮蔽)ために、小さい窓を設置する、というのが省エネの観点からすると基本となります。

こうした断熱・気密の性能を高めていくと、エアコンの台数を半分くらいに減らすこともできます。家の中で空気が循環するように設計すれば、エアコン1台で快適な住宅をつくることも不可能ではありません。結果、それだけ電気代の節約にもつながるでしょう。

しかし、たとえば西側にとても良い景色があるのなら、それを生かした大きな窓をつくって、西日を遮るような設計にすべきだと思います。月数百円の節約することも大切ですが、百万ドルの景色を無駄にするのはもったいない。人が暮らす家だからこそ、こうした情緒的なことも意識したおおらかなエコハウスが私の理想です。

快適に長く暮らせる家は環境にもやさしい

――家にも寿命があると思いますが、エコハウスの寿命はどのくらいなのでしょうか?

ほんの10年くらい前までは、平均寿命が30年程度の家が大半でしたが、今は伸びています。身体に良い材料、少ないエネルギー、良いデザイン、居心地が良いという要素がそろったロングライフデザインがエコハウスの基本。家の寿命が延びたのは、エコハウスの功績でもあるのです。最近のエコハウスの寿命は50〜60年と言われていますが、私はそれ以上をめざしたいと思っています。

たとえば、植林をすると、森が整って川がきれいになり、海までつながって、海にも良い影響を与えます。それが循環するように、なるべく日本で育った木で家をつくっていくことを私は大切にしています。木が育つのに60〜70年かかるので、家もこのサイクルに合わせるとよいと考えています。

――寿命が長いということは、2、3世代が暮らせますし、環境面にやさしいということにもつながりますね。

そうですね。環境に配慮した家づくりという観点でいえば、使用する材料は後で処分するときに産業廃棄物になってしまうようなものを使わないことも大切です。

たとえば、私の事務所の壁は、100%自然素材の火山灰クリームのような壁材で、卵の殻からとったコラーゲンを混ぜて接着剤にしています。樹脂が混ざっていないので、産業廃棄物になりません。さらに火山灰は匂いの吸着や湿度を調整する効果もある優れた素材でもあるのです。

このほかにも断熱材にはいろいろな種類や素材があるので、専門家にいろいろ相談してみるとよいでしょう。

――エコハウスを建てるうえで、課題などはありますか?

エコハウスは単純ではないので、施工が難しいことが課題です。施工者によって性能が変わってしまうことがあるので、評価が高い工務店に依頼しないといけません。

また高気密・高断熱のエコハウスは、通常に比べて金額がやや大きくなります。ここは予算との話し合いになりますが、投資したぶん省エネになり、健康で快適な暮らしができるので、生涯で考えるとエコハウスは絶対に良いものだと思います。

また、建て替えの頻度が多くなれば、それだけCO2を排出する工事・解体作業が増えてきます。さきほどお話しした通り、エコハウスは寿命が長いので、建て替えが少なくてすむという点でも環境にもやさしい家と言えるのです。

――エコハウスには多くの魅力があることがわかってきたのですが、やはり特殊な家ということになるのでしょうか?

エコハウスはけして特殊なものではありません。家の形を変える必要もないですし、実際の施工面でも、従来の家に断熱材をしっかり入れて隙間風を抑え、アルミサッシをやめるだけで充分、省エネの効果が得られるエコハウスになります。

こうした「省エネで快適な暮らし」を実現するほかにも、エコハウスには「健康に暮らせる家」という特徴もあります。たとえば毎年、日本ではお風呂場の温度差によるヒートショックで亡くなる方がおよそ17,000人もいます。これは家の断熱性の悪さが一部、関係しています。居室とお風呂場の温度差が大きいと、お風呂場に移動したときに寒さで急に血圧が上あがり、心臓に負荷がかかって倒れたりしてしまうのです。建築家の立場からすると、こうした課題にも向き合わなければなりません。エコハウスはそのひとつの解決策であり、エコハウスが普及すれば、この数も減らせるはずだと考えています。

――なるほど。エコハウスは“省エネの家”ということだけではなく、“長く、快適に、健康に暮らせる居心地の良い家”であることが大切だということですね。

はい。エコハウスというと、どうしても家計にダイレクトに影響する省エネという観点ばかりが大きく取り上げられがちですが、大切なのはその家に生活する家族が心地よく暮らせること。家は、住む人、訪れる人を癒し、心を豊かにするものでなければなりません。たとえば、電気代を1円でも安くする省エネも大切ですが、季節の移ろいを感じながら豊かに暮らしたいですよね。こうした心の豊かな暮らしを実現するひとつの選択肢が、快適に長く、そして健康的に暮らせるエコハウスであることを知ってほしいと思います。

伊礼 智さん
1959年沖縄県生まれ。東京芸術大学美術学部建築科大学院修了、丸谷博男+エーアンドエーを経て1996年伊礼智設計室開設。斬新でなく実用的なデザイン、誰もが居心地良いと思える家づくりを追究する。2006年「9坪の家」、2007年「町角の家」でエコビルド賞。2013年、i-works project でグッドデザイン賞を受賞。「エコハウス大賞」審査員を2015〜2019年まで務めた。著書・共著に「伊礼智の住宅設計」「小さな家70のレシピ」などがある。

まとめ

エコハウスというと、なんとなく敷居が高く感じてしまう方もいるかと思いますが、伊礼さんいわく、「居心地の良い家」を突き詰めていくと、エコハウスになるといいます。

これからの家づくりおいて「エネルギーをいかに効率的に使うか」は、重要な課題となってきています。世界的に環境問題がさけばれるなか、自然環境を上手に活用するエコハウスは、省エネにつながり、環境にも家計にもやさしく、そして居心地の良い豊かな暮らしを実現してくれるのですね。

エコハウス、ぜひ家づくりの参考にしてみてはいかがでしょうか。

なお、インタビューの中でも出てきましたが、エコハウスを含め、最近の住宅では太陽光発電を採用している家が多く見受けられます。太陽光発電っていったいどんなものなの?という疑問を持たれた方はぜひこちらの記事も併せてチェックしてみてくださいね。

今回のように、新築を検討する際には、住宅のエネルギーを考えることも重要なポイントとなります。住宅の設備を上手に選ぶことで省エネ・節約ができますが、もっと簡単に「電力会社を変えるだけ」でも光熱費の節約につながるってご存じでしたか?ヒナタオでんき&ガスでは、暮らしのニーズと想いにお応えする「おトクなプラン」をご用意しています。新築やお引っ越しのタイミングで、ぜひ一度ご自宅のエネルギーについて見直してみませんか?

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