地球がエネルギーになる!? 温泉とも深い関係を持つ地熱発電のしくみとは?【親子で学ぶエネルギーの未来】

2020/10/12

太陽光、風力、水力発電に比べて、あまり知られていない地熱発電。日本での地熱発電による発電量は、国内の全発電量のわずか0.24%(※1)。再生可能エネルギーのなかではもっとも発電割合の小さいエネルギーです。そんなマイナーな地熱発電ですが、実は日本人の多くが大好きな温泉と深い関係があります。今回は、地球そのものがエネルギーとなる地熱発電について、世界での導入状況もあわせて解説します。

※1)認定NPO法人環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)

地熱発電のしくみ

それでは地熱発電の基本から学びましょう。発電のしくみや発電量はどのようになっているでしょうか?

どうやって発電しているの?

地熱発電は、マグマの熱エネルギーを利用した発電方法です。

地上で降った雨や雪が地下深くまで浸透すると、マグマの熱で温められ、高温の「地熱流体」(蒸気や水が含まれたもの)となります。地熱流体は地下1,000〜3,000m付近でたまり、大きな熱の貯蔵庫のような「地熱貯留層」ができます。ここから高温の蒸気を取り出し、タービンを回して発電するのが地熱発電のおもなしくみになっています。

どのくらい発電できるの?

資源エネルギー庁によると、地熱発電による2014年時点の設備容量は、約52万kW。地熱発電は80%以上の設備利用率といわれているので、仮に80%で稼働させると年間の発電量は36億kWh。これは一般家庭約100世帯が年間に使用する消費電力に相当する量になります(※2)

ところが、日本の全発電量に占める地熱発電の割合は、わずか0.24%(2014年)にとどまっています(※3)

※2)みるみるわかるEnergy「地熱発電のしくみ
※3)認定NPO法人環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)

どこで発電できるの?

地熱発電に向いているのは、火山に近い場所で平坦な土地です。火山帯や地熱地帯の分布から、おもに東北や北陸、九州、北海道が適しています。

新たに地熱発電施設をつくるためには、地熱貯留層から蒸気を組み上げる生産井(せいさんせい)を掘らなくてはなりません。そのため、高い山ではなく海抜の低いところを選ぶことが建設コストの削減につながります。

地熱発電のふたつの方法

それでは、概要がわかったところで、具体的な発電方法を見てみましょう。発電方法は、おもにふたつ。もっとも一般的な「フラッシュ発電」と、最近導入が進んでいる「バイナリー発電」があります。

フラッシュ発電

200℃以上の高温の地熱流体を利用する発電です。

1.地熱貯留層に生産井(せいさんせい)と呼ばれる井戸を掘ります。
2.分離器で地熱流体を蒸気と熱水に分けます。熱水は還元井と呼ばれる井戸から地下に戻します。
3.取り出した蒸気でタービンを回し、発電します。
4.発電に使用した蒸気は、復水器で温水に変換し、冷却塔で冷やします。冷まされた水は復水器を循環して再び蒸気の冷却に使用します。
(出典:日本地熱協会「地熱発電のしくみ」)

ここで説明した方法は「シングルフラッシュ」といい、温度や圧力によってダブルフラッシュ、トリプルフラッシュなど細かな発電方法の違いがあります。

バイナリー発電

100℃程度の低温の地熱流体を利用する発電です。

1.生産井から地熱流体を取り出します。
2.地熱流体で有機媒体等の二次媒体を温めて蒸気にします。二次媒体を温めた地熱流体は、還元井から地下に戻します。
3.二次媒体の蒸気でタービンを回して発電します。
4.発電し終えた二次媒体は、液体に戻して循環ポンプで再び蒸発器に送ります。
(出典:日本地熱協会「地熱発電のしくみ」)

たとえば、80℃を超える温泉は、バイナリー発電の資源として使うことができ、発電に利用した温泉は、浴用に適した温度に下がります。このように地熱発電に温泉を利用することもできるのです。

地熱発電のメリットと課題


▲岩手県松川地熱発電所

地熱発電は地球にやさしい再生可能エネルギー

再生可能エネルギーである地熱発電は燃料を必要としないため、二酸化炭素がほとんど排出されません。マグマの熱や雨水といった、枯渇することのない自然の恵みを利用するため、半永久的に安定して利用することができるエネルギーです。

また、陽が沈むと電気をつくることができない太陽光発電や、風が吹くことが条件の風力発電などに比べて、地熱発電は時間や気象条件などに左右されず、24時間安定的な発電を可能にすることも大きなメリットになっています。そして、地熱発電は純国産の貴重なエネルギーです。国際情勢の影響を受ける輸入資源とは違い、自国のエネルギー自給率を上げるためにも重要な資源となっています。

環太平洋の火山帯に位置し、世界有数の火山国である日本。潜在的には、現在の設備容量の約45倍である2,347万kWという地熱資源が眠っています。これは世界で第3位の資源量となっていますが、実態としては、日本で地熱発電の導入はあまり進んでいません(※4)。

※4)経済産業省・資源エネルギー庁「地熱資源開発の現状について

地熱大国の日本に発電所ができにくい理由

地熱発電に適している環境があるのに、なぜ日本では地熱発電が普及しないのでしょうか?その理由は、発電設備をつくるための開発や調査に時間とコストがかかること、また地熱発電に適する場所の多くが、国立公園のなかや温泉地であることが関係しています。

日本の活火山の多くは、国立公園・国定公園内にあります。地熱発電に利用するためには、発電所を建設しなければなりませんが、長らく、環境保護が必要なこれらの地域で新しく地熱発電所をつくってはいけないという規制がありました。地熱資源2,347万kWのうち、約81.9%がこの地域内にあったのです(※5)。

その後、再生可能エネルギーが重視されてきたことや、脱原発の影響で、徐々に規制は緩和され、現在では国立公園内の約7割の地域で地熱発電所が新設できるようになりましたが、関係各所の意見をまとめるのはむずかしく、なかなか建設にいたりません。

また、地熱発電に適したもうひとつの場所である温泉地では、地熱発電所の建設によって温泉が枯れたり、性質に影響を及ぼしたりするのではないかという反対意見が根強くあります。地熱発電と温泉は利用する地層が異なるので、直接的な影響はないとされていますが、こちらもまだまだ課題があるようです。

※5)ダイヤモンド・オンライン「日本は世界3位の地熱資源大国なのに発電所建設が進まなかった3つの理由

世界の地熱発電の状況


▲ブルーラグーン地熱温泉(アイスランド)

地熱資源の量で世界第3位を誇る日本ですが、2019年時点で発電能力は世界第10位。貴重な地熱資源を活かしきれていないともいえます(※6)

では、世界の地熱発電事情はどうでしょうか。世界最大規模の地熱地帯があるアメリカの資源量は、日本の約1.7倍である3,900万kW。設備容量は359.6万kWで日本の6.9倍です。そのほか、インドネシアやフィリピン、ニュージーランドなどの太平洋に位置する国々でも、日本よりたくさんの地熱発電が行われています(※7)

ここで北に目を向けてみましょう。日本から約8,500km北に位置するアイスランドでは、冬の厳しい寒さに耐えるためにたくさんのエネルギーを消費します。ひとりあたりのエネルギー消費量は日本の5倍に達しますが、すべて自国の再生可能エネルギーで電力需要をまかなっているのです。そのうち地熱発電は3割。発電以外にも、地熱を利用した温水暖房、農業用の温室、除雪など至る所で、用途に合わせて地熱資源を利用しています。

地熱発電所での熱水を利用した地熱温泉施設は、アイスランドを代表する観光スポットとして世界中から観光客が訪れています(※8)

※6)グローバルノート「世界の地熱発電能力 国別ランキング・推移
※7)独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構「地熱資源情報
※8)大阪ガス「世界の省エネ

地熱発電の将来に期待


▲大分県八丁原地熱発電所

地球の熱エネルギーを利用する地熱発電は、環境への負荷が少ない発電方法のひとつ。政府は、約51万kW(発電電力量26億kWh、2013年度)だった地熱発電の設備容量を、2030年度には約3倍の約140~155万kW(発電電力量102~113億kWh)まで増加させることを目指しています(※9)。

国内最大規模の大分県八丁原地熱発電所は、阿蘇くじゅう国立公園特別地域の一画にあり、周囲には多くの温泉郷があります。日本と同じように資源に乏しかったアイスランドが、天然資源を有効活用して自国でエネルギー生産をまかなっているように、火山国の特性と技術を活かして日本の地熱発電も発展を遂げるかもしれませんね。

※9)経済産業省・資源エネルギー庁「地熱資源開発の現状について

いかがでしたでしょうか。ひなたおたよりでは、地熱発電のほかにも地球環境にやさしい再生可能エネルギーの取組みを紹介しています。ぜひチェックしてみてくださいね。

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