ゼロウェイストな生活へ。『ゼロ・ウェイスト・ホーム』翻訳者に聞く家庭でできる実践アイデア
2021/06/28

私たちの消費生活と切り離すことができないゴミ問題は、今日も地球を悩ませています。
このままだと世界がゴミで溢れてしまう!そんな未来を変えるべく、世界各国で様々な取り組みが加速していますが、そのうちのひとつに「ゼロウェイスト」という考え方があります。
日本でも少しずつ広がりを見せるゼロウェイストについて、書籍『ゼロ・ウェイスト・ホーム』、『プラスチック・フリー生活』の翻訳者である服部雄一郎さんに、基礎知識やご自身のおうちで実践されているゼロウェイストのアイデアについて伺いました。
写真/服部雄一郎ブログ「サステイナブルに暮らしたい」
目次
ゼロウェイストの考え方とは?3つのポイント
ゼロウェイストとは、英語で表記すると「zero(ゼロ) waste(無駄)」。つまり、ゴミや無駄をなくすという意味を表しています。
ただ、ゼロウェイストの考え方はそれだけではありません。
ゼロウェイストのポイント①循環型社会を実現する
ゼロウェイストは、ゴミの量を減らすことに加えてゴミを生まないような社会の実現を重要視しています。
ゴミ処理に多くの税金が使われているのをご存知ですか?
ゴミそのものを減らす生活を選択することで、ゴミ処理費は削減されます。ゴミが出ないことは、よりよい社会を実現できる可能性がある生活なのだと、『ゼロ・ウェイスト・ホーム』を翻訳し学びました。
ゼロウェイストのポイント②脱プラスチック
日本でも少しずつ取り上げられるようになってきた、プラスチック問題。マイクロプラスチックによる海や山の汚染、そして化学的に指摘されている長期的な健康リスク(※1)についても目をつぶれません。
家庭で排出するプラスチックは意外と簡単に減らせるため、ゼロウェイストにおいても積極的に取り組みたい課題です。
※1)日本財団「マイクロプラスチックが人体に与える影響は? | 増え続ける海洋ごみ」
ゼロウェイストのポイント③無理せず楽しむ
『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳を手がけた後、それまで以上に真剣にゴミを減らしてみようと決意しました。でも、「どれだけ減らせるか」という結果ばかりを気にするあまり、少し疲れてしまったことも。
そんなあるとき、ゴミを減らす工夫自体を純粋に楽しんでいる方のブログを見て、「ゴミの量ばかりに固執せず、できていることに目を向けるべきなんだ!」と、目からウロコでした。結果を追い求めすぎると心が疲れてしまうので、できそうなことをキャッチする小さな意識と、ちょっとした工夫ができた自分を自ら認め、楽しむことが継続のポイントになります。
家族に強要しないのがゼロウェイストのコツ
ゼロウェイストの「プロセス自体」「取り組み自体」を楽しめるようになったことで、生活の軸ができたように感じています。家族でゴミについて話すことも多く、みんなの意識が上がってきました。
しかし、ゼロウェイストに対してどんなに前向きでも、時には家族それぞれ意見が食い違うこともあります。特定のものに対する重要度は違うので、自分の意見を押し通そうとするとケンカになってしまうこともあるでしょう。無理はしすぎず、相手にも強要しないことが大事です。
ゼロウェイストは、生活のあらゆる場面で、ゴミを減らせないか、まず考えてみること。そして、できそうなことがあればどんどん実行してみる。きっと、その先により良い暮らしがあるのではないでしょうか。
ゼロウェイスト実践アイデア①台所
それでは、私がどのようにゼロウェイストを実践しているのか、アイデアをいくつかご紹介したいと思います。まずはキッチンでできることから。
生ゴミを減らす
夏が近づくと特に厄介な生ゴミは、土に還すのがおすすめです。生ゴミがないだけで、ゴミの量が際立って減り生活の変化を実感できるでしょう。
生ゴミ処理には、安価で原始的なコンポストがおすすめ。電動の生ゴミ処理機というものもありますが、乾燥させて、土に戻さずにゴミとして捨ててしまうのであれば、やはりコンポストの方が望ましいと思います。また、生ゴミを土に還すことによって、フードロス削減にも繋がります。
⇨フードロスの詳しいお話はこちらへ
洗剤・スポンジ・保存袋を使わない
かれこれ、食器を洗う中性洗剤を10年以上使っていません。どうしてもというときには、手洗い用の石鹸や重曹を使う程度。洗剤なしで汚れが落ちる木綿の「びわこふきん」や、ヘチマたわしを愛用しています。それぞれ土に還すことができる、ゼロウェイストなエコ商品です。
便利なスポンジは、磨耗することでマイクロプラスチックが発生してしまい、下水に流れてしまいます。もし料理の中に混入していたら、嫌ですよね。
使い捨てのプラスチック製保存袋も使用せず、ガラス瓶を食材保存に利用しています。気にしすぎることはありませんが、プラスチック製品がない方がずっと楽で気持ちがいいのです。
このように、ゼロウェイストを意識すると社会の構造が見えてくる気がしませんか。
壊れにくい調理器具を選ぶ
一般的なご家庭は、台所がプラスチックに溢れている状態かと思いますが、我が家のキッチンツールは極力木製かステンレスなど、壊れにくく長持ちするものを選ぶようにしています。
かといって、今持っているプラスチック製品を捨ててしまうのは本末転倒な部分も。ゼロウェイストとしては、「次に新しいものを買うとき」に意識を向けることが一歩前進になるのではないかと思います。
ゼロウェイスト実践アイデア②掃除
続いては、掃除について。掃除のために高性能家電は必要なく、私は古くからあるシンプルなもので十分だと考えています。
ほうき&お茶がらで部屋のお掃除
家の中の掃除には、ほうきと雑巾を使っています。収納場所が必要で、メンテナンスや出し入れの手間がかかる掃除機よりも、ほうきでこまめに掃除をするのがうちの生活に合っているようです。
ホコリが舞ってしまうときは、適度な湿り気のあるお茶がらやコーヒーがらを使うとホコリが吸着されるので、ぜひ試してみてください。捨ててしまうだけのお茶がらを再利用するのは昔からの知恵ですが、ゼロウェイストな発想そのものですよね。
掃除しやすくするには?
ものが減ると、掃除がしやすいことを実感できます。床にたくさんものがある部屋は、ほうきや雑巾がけには向いていません。自分たちがやりたい掃除スタイルが実現できる部屋に整えておくことも大事ですね。
お風呂掃除には重曹
お風呂掃除にも洗剤を使わず、主に重曹を使っています。料理やお菓子作り、掃除にも使える重曹は本当に便利で万能です。カビはお酢でこするなど、ナチュラルクリーニングを心がけています。
ゼロウェイスト実践アイデア③洗濯
ここまでお話しすると、衣類を手洗いしているのではないかと想像されるかもしれませんが、我が家も今は全自動の洗濯機を使っています。でも、シンプルな粉石鹸と太陽熱のお湯を使った洗濯です。
子どもも自分の服を自分で洗濯
小2の息子も自分の洋服を自分で管理しています。洗濯物を洗濯機に入れ、終わったら干して部屋にしまうまでを行っています。ハンガー収納にしているので、干したまま収納できて、子どもでも簡単です。天気を見て自分で考えながら洗濯をすることは学びになり、子どもの自立心にも繋がるのではないでしょうか。
服選びに気をつける
子どもの靴下はもちろん、すぐ汚れてダメになってしまう白い服は選びません。洋服を買う機会はほとんどありませんが、多少値段が高くても破れにくく丈夫なアウトドアブランドの製品を選んで、長く使うようにしたいと考えています。
ゼロウェイスト実践アイデア④子どもと楽しくやってみよう
子どもがいるとゴミが減らしにくい、という話をよく耳にします。我が家にも子どもたちがいるのでとても共感できますが、小さな子どもがいるからといってゼロウェイストができないわけではありません。
私の場合は、子どもがうまれてからからゼロウェイストのようなエコを意識した暮らしが、より楽しくなりました。子どもにどんなことを伝えていけるか、ゼロウェイストが子どもと過ごす時間の価値を高めてくれるような気がします。
難しく捉えがちなゼロウェイストも、伝え方次第で子どもたちはとても興味を持ってくれます。漫然とゴミを出すのではなく、10年後、20年後を見据えてどんなものがゴミになってしまうのか、子どもたちとも日常的に話しながら一緒にゼロウェイストの工夫をするのは楽しいものです。
子どもにとっても自然にゴミを減らすことを意識して育っていくというのは、よりよい社会の実現に繋がるのではないでしょうか。
ゼロウェイスト実践アイデア⑤虫対策も無駄をなくして
これからの季節は、都市部でもおうちで発生する虫に悩まされる方が少なくないでしょう。我が家は緑が多い高知県で暮らしているので、家の周りに虫がたくさんいます。家の中に虫が出たときこそ、子どもたちと楽しく虫退治を!
うちの子どもは虫が大好きなので、ちょっとしたアトラクションにして乗り越えています。
ホームセンターへ行けば強い薬品を使った殺虫剤や駆除剤がいくらでもありますが、成分が気になることはもちろん、プラスチックでできた使い捨ての忌避剤をポイと捨てるのは気持ちが良いものではありません。そのため、いかにナチュラルに退治するかを考えています。
ゴキブリにはホウ酸団子、アリ退治にはホウ酸砂糖水の毒エサで充分な効き目がありました。
ゼロウェイストにゴールはない
このように家庭で日常的にできるゼロウェイストの工夫はたくさんありますが、ゼロウェイストにゴールはありません。
以前はとにかくゴミを減らそうと、ゴミの量を計っていた時期もありましたが、ゴールを突き詰めようとすると焦ってしまったり無力感で苦しくなったりすることがありました。いまは、全て途中経過でいいというのが私の考えです。大変だったら辞めることもできると、気楽に取り組んでいます。
そして、ゼロウェイストは発見の連続です。
最近では、家の熱効率について考える機会がありました。以前はとにかく天然素材で、伝統的な知恵を生かした家がエコであるような気がしていましたが、専門家の意見を聞いてから考え方が変わりました。
断熱材をしっかり入れて、家全体で一定の温度が保たれるようにすると少ないエネルギーで快適に過ごすことができるのだと、家の環境を考え直すきっかけに。新たな知識を取り入れたら、その都度柔軟に軌道修正して進んでいきたいと思っています。
できることからゼロウェイストを
ゴミの生まれない社会を目指す「ゼロウェイスト」は、必ずしも難しいことではありません。ちょっとしたゴミを減らすためにできることは、日常に意外とたくさんあるものです。小さな行動が、きっといずれ大きな変化を生むでしょう。
みなさんのご家庭では、どんなゼロウェイストのアイデアが浮かびましたか?お子さんがいるおうちでも、ぜひ楽しくゼロウェイストを考えてみてエコな活動を楽しんでみてはどうでしょうか?
⇨エコ生活の詳しいお話はこちらへ
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