カーボンニュートラルとは? 脱炭素社会をめざす道すじ

2021/01/14

低炭素から脱炭素へ――。今、地球温暖化による深刻な環境問題への対策として、世界各国で温室効果ガス削減の取り組みが強化されています。日本も脱炭素社会の実現に向けて、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げ、さまざまな施策がおこなわれています。

この脱炭素社会を実現する重要なキーワードとして注目されているのが「カーボンニュートラル」という概念です。最近はニュースなどでも取り上げられるようになり、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。今回は、この地球の未来に大きな影響を与えるカーボンニュートラルについて、詳しく解説します。

カーボンニュートラルとは?

2020年11月、菅義偉首相は主要20カ国・地域首脳会議において、2050年までに温室効果ガスの排出量を“実質ゼロ”にする目標を掲げ、脱炭素社会の実現を宣言しました。

温室効果ガスとは、石炭などを利用した火力発電をはじめ、製鉄、輸送などさまざまな生産活動や、私たちの暮らしのあらゆる場面で排出される気体のこと。地球温暖化のおもな原因とされ、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などがあり、そのうち約90%を二酸化炭素が占めています(※1)。

二酸化炭素の排出をゼロにすることは不可能です。では、「温室効果ガスの排出量を“実質ゼロ”にする」とは、どういうことなのでしょうか?この目標を達成するキーワードとされているのが、「カーボンニュートラル」です。

「カーボンニュートラル」とは、地球上に存在する炭素(カーボン)の総量をこれ以上、増やさないように、温室効果ガスの排出を抑制すると同時に、排出された二酸化炭素を吸収することで、結果的に排出量を全体としてプラスマイナス・ゼロにするという概念です。日本はこの考え方にもとづき、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることで「脱炭素社会」の実現をめざすことになります。

2019年度の日本の温室効果ガスの総排出量は、12億1,300万トン。2014年度以降、6年続けて減っており、算出を開始した1990年度以降でもっとも少ない量となっています(※1)。その要因として、さまざまなシーンで推進される省エネ活動により総体的なエネルギー消費量が減少していることや、再生可能エネルギーの普及などが挙げられます。しかし、このペースでは2050年までにカーボンニュートラルを達成することはむずかしいといわれています。

※1)環境省「2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)

カーボンニュートラルを達成するにはどうする?

では、どうすればカーボンニュートラルは達成されるのでしょうか?具体的な施策としておもに推進されているのが、二酸化炭素の排出量が多い化石燃料の削減と、再生可能エネルギーのさらなる普及です。

化石燃料を大幅に削減

石油、石炭、天然ガスを総称した化石燃料は、現在でも日本の発電の根幹を支えている重要なエネルギー資源です。2019年度の国内における総発電量のうち、化石燃料での発電は依然として約75%を占めています。(※2)。しかし、化石燃料は低コストであることが大きなメリットではありますが、燃焼する際に二酸化炭素の排出量が大きいなど、脱炭素社会の実現には大きな課題があります。

再生可能エネルギーへの転換

この化石燃料の代替エネルギーとして注目が高まっているのが再生可能エネルギーです。太陽光や、風力、水力、地熱、バイオマスなど自然の力を利用した発電は、二酸化炭素を排出しないことから、再生可能エネルギーへの転換を推進することが二酸化炭素排出量の削減に大きく貢献するといわれています。

再生可能エネルギーの発電量は、年間発電量のうち19.2%と現段階ではまだ低い水準です(※2)。化石燃料や原子力発電などと比べてコスト面や安定供給が大きな課題となっていますが、カーボンニュートラルを達成するためには、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やしていくことが求められているのです。

⇨再生可能エネルギーの詳しいお話はこちら

原子力発電の可能性

再生可能エネルギーとともに、化石燃料の代替エネルギーとして可能性を持っているのが、原子力発電です。ウランを燃料とする原子力発電は、発電段階で二酸化炭素を排出せずに大量の電力を安定して供給でき、さらに使い終わった燃料はリサイクルして再利用できることが特徴として挙げられます。

少ない資源で効率的に電力をつくれる原子力発電をもっと利用すれば、化石燃料がまかなってきた電力の代替に大きな効果があるといわれています。しかし福島第一原子力発電所の事故以来、脱原発を求める世論が高まり、現状では原子力を利用した発電量は総発電量の6%程度にとどまっています(※2)。

※2)認定NP0法人 環境エネルギー政策研究所「速報 国内の2019年度の自然エネルギーの割合と導入状況

カーボンニュートラルを達成する「バイオマスエネルギー」の可能性

カーボンニュートラルは、再生可能エネルギーのなかでもバイオマス発電のしくみを知ることでより理解しやすくなります。

バイオマスエネルギーとは?

バイオマスとは、動植物から生まれた再生可能な有機性資源のこと。家畜の排泄物などの畜産資源や、廃棄された生ごみなどの食品資源、稲やもみがらなどの農産資源、建築廃材や間伐材などの林産資源などがあります。

バイオマスのおもな用途は大きく2通りあります。バイオマスを石油系資源の代替品として、たとえばレジ袋などのプラスチックや樹脂製品の素材として利用することと、バイオマスを燃やしたりガス化したりして発電エネルギーとして利用することです。

バイオマス発電のしくみ

たとえば、カーボンニュートラルを象徴する代表的なバイオマスエネルギーとして、木質バイオマスが挙げられます。建築廃材や間伐材などを利用した木くずや木材チップを燃やして発電エネルギーがつくられますが、木質バイオマスを燃焼する際にも二酸化炭素は発生します。しかし、木質バイオマスはもともと光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収して育ったことから、その吸収した量によって燃焼する際に排出された二酸化炭素は相殺され、二酸化炭素の排出量は結果的にプラスマイナスゼロになるというしくみです。

そのほかにも、牛や豚の糞尿などの畜産資源や、生ごみなどは、発酵させることで発生するメタンガスを利用して発電をおこないます。牛や豚は二酸化炭素を排出しますが、その排泄物などを資源として再利用することで、排出した二酸化炭素を相殺できると考えられているのです。

バイオマス発電の割合は?

日本国内での総発電量のうち、バイオマス発電が占める割合は2.8%(※3)。再生可能エネルギーのなかでは、太陽光、水力に次いで3番目に多い発電方法となっています。たとえば、林業の盛んな地域では木質バイオマスを利用した発電を導入するなど、それぞれの地域にあるバイオマス資源を活用することはエネルギーの地産地消になり、さらに新たな雇用の創出にもつながることが期待される分野でもあるのです。

⇨バイオマス発電の詳しいお話はこちら

※3)認定NP0法人 環境エネルギー政策研究所「速報 国内の2019年度の自然エネルギーの割合と導入状況

カーボンニュートラルの達成が地球温暖化を防ぐ

2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするために、バイオマス発電をはじめ再生可能エネルギーの開発は、今後さらに加速していくことが期待されています。政府はこうしたカーボンニュートラルを達成するための取り組みを、新たな成長戦略と位置づけてさまざまな支援をおこなっています。

このカーボンニュートラルという大きな目標に向けて、国や企業だけでなく、家族単位でもできる限りエネルギーの無駄を抑えることで貢献することができます。脱炭素社会が実現されれば、進行する地球温暖化を防止する可能性が高まります。それぞれの立場で、できることを少しずつ。それが大きな力となって、未来の地球を守ることにつながるのです。

⇨私たちができる「環境にやさしいこと」に関する記事はこちら

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